ハイヒールで竹馬に乗ったら降り方が分からなくなった

ハイヒールで竹馬に乗ったら降り方が分からなくなった⑫

ハイヒールで竹馬に乗ったら降り方が分からなくなった⑪

2020年1月。私は大きな選択を迫られていた。ずっと考えなくてはいけないことだったのだけれど、考えることから逃げていた。でもタイムリミットが迫ってきていた。あと6ヶ月。あと6ヶ月のうちに私は在職中の会社に復職をするか、それとも退職をするか。

考えることから逃げていたというよりも、自分の人生を左右するような大きな決断をできるほどの思考力、物事の選択能力、決断力がずいぶんと落ちていた。

だから考えなくてはいけないと分かっているものの、何から考えたら良いのかわからなかった。今回はその時の葛藤を記してみようと思う。

復職するか退職するか

会社の休職期間は、その人の勤続年数に応じてあらかじめ決まっている。私の場合は1年6ヶ月だった。休職を決めた当時は、1ヶ月も休めば十分に復職できると思っていた。それは大きな間違いだった。1ヶ月なんて驚くほどあっという間に過ぎた。その日その時のことしか考えることができなかった。その日その時のことを一生懸命考えて行動する、それを続けていたら1年が過ぎていた。

私にとって半年先のことを考えることができるなんて、心身ともに随分回復したなあと感じる瞬間だった。

それでも休職前のように、判断材料を集めて合理的に思考し、最善の策を導き出すということはとても難しかった。そして自分で考えることができないならば、すぐそばにあるスマートフォンで経験談を調べるとか、誰かに相談するとか今なら考えるのだけれど、当時は相談する・調べることすら思いつかなかった。

そんな状況の中、私は、判断力の落ちた頭で自分の考えることにした。

復職のメリット、デメリット

会社から提案していただいたのはもちろん復職である。復職の見込みがあるからこそ、休職を提案してくださった。そして実際に復職後にここはどうかと配属先をぼやかして提案もしていただいた。

復職のメリット

提案していただいた配属先は、間違いなく今所属している部署よりもストレスは少なくやり慣れた仕事をすることになるので、自分にとってはとてもいい提案をしていただいたと思う。

部署が変わるとはいえ会社が変わるわけではないので、社内の空気感も、仕事のやり方もそこまで大きく違わないだろう。そしていただけるお給料も安定しているし、あらゆる変更に伴う煩雑な手続きも不要だ。環境的にも金銭的にも、あまり大きな変化がない。復職後の雰囲気がある程度予想できることで、心身ともに負荷が少ない。これが復職をする大きなメリットだと思う。履歴書にもいわゆる「傷」がつかない。

大学を卒業してずっと同じ会社に勤めてきた私は履歴書の職歴に書くことが増えるということが、大きな不安だった。今振り返るとどうってことないのだけれど、当時は新卒で入社した会社に骨を埋める覚悟だったので復職という選択肢が一番自分にしっくりくる気がした。

復職のデメリット

一方で、私にとっての復職のデメリットは「希望して今の部署に異動したのに、すごろくの駒が逆戻りする感覚」「これまでの苦労が台無しになる感覚」だった。在籍している部署に何としてもしがみつきたかったというのが当時の本音だ。

私自身は1年以上休職をして、心身ともに元に戻りつつある。だから元行った場所に戻りたい。そして休職前の私よりもずっと仕事ができる私になれることで自信を取り戻したかった。一方会社側からすると1年以上休職した人間を元の場所に戻す、かなりリスキーな選択だ。だから、配置転換の提案は至極当然だと思う。

周囲から見た本人と、私自身が感じている本人の体調や精神状態にはかなりの乖離がある。どの決断をしたとしても半年後1年後3年後、本人が楽しく働けていること、これがいわゆる正解だと思う。会社は再発を一番恐れているので、再発の可能性が最も低い仕事を割り振りし、一方で休職している本人は、今までの遅れを取り戻そうと一番リスキーな選択をしようとする。

ここに会社と休職した本人の差が発生する。なかなか埋まるものではない。当時私が、誰かに相談するという選択肢を持っていたなら、担当者と話し合いをするとか自分の状況を知ってもらうとか、会社の意向を理解するとかそういったことができたように思う。

私以外の多くの人も、自分自身の復職に対するモチベーションや希望を誰かに伝えることはなく、休職し迷惑をかけてしまったという負い目から会社の意向を全て汲み取り、自分自身のキャリアプランや人生設計を無視したような復職の選択をする人が多いように感じる。

これが復職のデメリットだと思う。

退職のメリット、デメリット

退職のメリット

一方で退職の選択をする人にはどんなメリットがあるだろうか?1番に「解放感」があると思う。いついつまでに体調を整えないといけないという焦りがなくなり、心に余裕を持って療養生活を送ることができる。また退職金制度があれば退職金も支給されるので、当面の生活に困ることはない。

復職することが前提で休職をしたのに、という負い目は少なからずあるが退職届を出した瞬間に忘れ去ってしまう。

復職のデメリットであげたような、自分自身のキャリアプランや人生設計を無視したような復職はしなくていいので、転職活動は自分の思い描いたキャリアプランを実現させるための行動を起こすことができる。リセットボタンではないけれど、自分のことを全く知らない環境に身を置いて心機一転、キャリアを再構築することができる。

退職のデメリット

一方で退職のデメリットは、勤務している会社で築き上げた自分の地位や社内だからこそ通じる自分のキャラクター、これが一瞬にして消え去ることだと思う。勤続年数が長ければ長いほど、そして愛社精神を感じて物心共に捧げてきたものが大きい人こそ、退職の喪失感は大きいと思う。

また、履歴書に退職理由をどのように書くか?(一身上の都合で)それでいいのだが転職活動をした時に、休職した上で退職したことが知られてしまうと転職活動がうまくいかないのではないのかと不安になる。

自分自身も休職までしたのに、復職できなかったという負い目、自分への自信をなくした状態で退職するというのは割と大きいデメリットだと思う。

私が15年勤めた会社を退職した経緯

結論から言うと、私は退職の選択をした。

一番の理由は「期日までに復職することに焦りを感じる」からだ。もう少し会社とコミュニケーションを取れていれば、最初からフル出勤でなくても例えば時短勤務や勤務日数を減らして徐々に体を慣れさせる、そういった復職方法もあったかもしれない。

しかし当時の私は0・100思考、白黒思考だったので、フル出勤での復職か退職かその2択しかないと思っていた。

退職をする、私は退職をするんだ、そう決めてから実際に会社に報告をするまで2週間ぐらい悩んだ記憶がある。お世話になった会社だし粘り強く私の復職を待ってくれていたのもあり、退職を選択したことをなかなか言えないでいた。

それでもいよいよとなった時に退職したい旨を伝えると、事務的に処理をしてくださり精神的な負い目というのは軽減された。正直な話、自分がいなくて会社が困ると思っていた。実際はそんなことは全くなくて、私の代わりはいくらでもいて、私がいなくても会社はどんどん進んでいく。

私の代わりがいないのは、家族だ。家族のためにこれ以上体調を崩したくないと思ったので、会社を退職することにした。

3年経って振り返る、私にとって休職期間とは

私が会社を退職してから3年が経った。休職当時のことを意識的に思い出す作業をしなければ、思い出すこともなくなった。3年という時間は1人の人間を変化させるのに十分すぎる時間だ。当時のことを客観的に振り返ることができて、もっとこうすれば良かった、ということはたくさんある。

未だに当時在籍していた会社に思い入れもある、もっと自分の能力やスキルを発揮して会社に貢献したかった。不完全燃焼感はある、こうしてブログに書くことで昇華させている。

判断力や情報収集能力など大きく欠けた状態で、会社を退職する決意をしたこと。誰かに相談していれその選択は違ったかもしれないと思う一方で、誰に相談しても私は退職を選んだかもしれないとも思う。常に私は私を幸せにするために存在していて、退職という決断も自分自身を幸せにするため、また、自分の家族を大切にするために決断したことだからだ。

1年3ヶ月の休職期間もまた、私にとって必要な時間だったと思う。周りばかり見ていた周りばかり気にしていた私が、一番大切にしたいのは何だと考え、1番にいたわるのは自分自身だと言う当たり前のことに気づけたこと。実際に時間とお金を使って自分自身をいたわれたこと。

仕事を通して私は成長したけれど、仕事以外のあらゆる面で成長はできる。本業以外で活躍したり稼いでいる人を知って、本業でがむしゃらに働く以外の稼ぎ方、能力の発揮方法、これらを知ることもできた。

自分が在籍している会社、部署、人間関係にとらわれすぎずもっと大きな枠組みの中で構築していくこと。これらのマインドセットができた。

2023年現在、私はこうしてブログを更新しているが、会社を休職しなければこういった活動もしていなかっただろう。音声配信Stand.fmでの配信もそうだ。

休職当時は、目の前が灰色で人生終わったと思っていたけれど、それ仕事一筋で生きてきた私という章が終わっただけだった。次の章は、本業だけにとらわれない自分の好きなことや自分の得意なことで誰かに喜んでもらうことを楽しみ、仕事にしていくといった内容だった。

結果的に私の人生は好転した。周りのサポートもあってこそだが、何よりも給食期間中に自分にとって何が一番大切なのか?自分自身を大切にしていたわって愛することではないか?それを実践し、自信を取り戻して、さらに自分の価値を探していくこれができたから、今があると思う。

今休職中の人や、自分の思ったような人生を歩めないでいる人、今が全てだと思わないで欲しい。今はこれが最善だと思っていた生き方がえがかれた章が終わる時だ。次の章は、自分の思った通りに描ける。これまでは人や環境に振り回されてきたかもしれないけれど、次の章はあなたが自由自在に書ける。

あなたの人生はあなたが主人公だ、是非あなたが幸せで締めくくれる章立てにしてほしい。

ハイヒールで竹馬に乗ったら降り方が分からなくなった⑬

ABOUT ME
ここいま
ご訪問頂きありがとうございます。音声配信stand.fmの配信者です。モットーは「いま、ここを心地よくいきる」です。