ハイヒールで竹馬に乗ったら降り方が分からなくなった

ハイヒールで竹馬に乗ったら降り方がわからなくなった⑩

ハイヒールで竹馬に乗ったら降り方が分からなくなった⑨

今回もここいまポエムの中で、人気の作品からご紹介します。この「天井」という作品は、休職当時に感じていたことを思い出して、2023年になってから書いたものである。かなりリアルな、経験者にしか分からないような感情の表現や描写ができたと思う。この作品も多くの方に朗読していただき、大変感謝している。

前回ご紹介した「カーテン」という作品紹介の中でも話したが、精神的に落ち込んでいる時は、必要だとわかっていても朝日を浴びたくないという気持ちになることがある。「天井」で表現したかった感情もまさに、朝日を浴びたくないずっと夜でいてほしい、何もしたくない、一人でぼーっとしていたい。そういう精神状態で過ごしていた。

ベッドから体を起こそうとしても、体が鉛のように重たくて起き上がることができない。これはメンタル疾患を抱えた方などが、自分が一番しんどかった時の体の状態を説明する時によく使われる表現だ。体が鉛のように重い。わかりそうでわからないと思う。私も、自分が実際にそのような状態になってみて初めて、体が鉛のように重いという言葉を体感した。

頭ではベッドから起きたい、起きなくてはいけない、そう思っているんだけれども、私の使っているベッドの周りだけ重力が重くなったのか?そう感じてしまうくらいに体が重く、また、体全体をベッドに縛り付けられているかのように、体が動かない。

起きたいな、動けないな。この葛藤を繰り返して、そして疲れて、諦めて目を閉じる。毎日朝が来るたびに、こんな葛藤を続けないといけないとしたら?想像するだけで、うんざりしないだろうか?

体が鉛のように重い人は、毎朝そんな葛藤を繰り返している。そりゃ当然、会社に勤めている人は遅刻もするだろうし、仕事に行きたくなくなるのも当然だと思う。毎日朝が来るのが億劫で、ずっとベッドに寝ていたいと諦めのような、投げやりのような気持ちにどんな人でもなるんじゃないかと思う。そしてこの原因が、自分にあるのだとしたらまだ頑張ろうとも思えるかもしれないけれども、大抵の場合、原因は1つではないし原因が分からない場合もある。

なんで自分がこんな目にあっているんだろう?

朝が来るたびに、人知れず涙を流しながらベッドの上で格闘している。そんな状態だから、SOSを出すことも、世の中に向けてそれを発信することも多くの人がしない。朝が来るたびに、また今日もベッドから起き上がることができないと情けなくなり、人知れず絶望感を味わっている。私もその一人だった。

2023年、私は毎朝決まった時間に起きる。朝が来るたびに絶望な気持ちになるどころか、よし今日も頑張るぞというさわやかな気持ちで目が覚める。数年前の、毎朝ベッドの上で涙を流していた自分からは、想像もできない姿だ。

「天井」この作品を書くにあたり、当時のことを思い出した。私にとってはとても苦しい経験だったが忘れたくはないと思った。毎朝爽やかな気持ちで目が覚め、今日も頑張るぞという気持ちになるということは当たり前ではない。ありがたいことなのだ。

「天井」この作品に触れた人の中には、同じような経験をした人もいらっしゃるだろうし、全く想像もつかないという方もいらっしゃるだろう。同じ経験をした方には、また今現在進行形で朝が辛いという方には、一人じゃないよ、ということを伝えたい。そして、ちょっと理解できないなあという方にも、世の中には希望の朝を感じることができない状態の人がいるということを、なんとなくでもいいので知って欲しかった。

音声配信stand.fmの中で、この作品を朗読された方の中には同じ経験をしたことがあるとお話をしてくださった方がいた。そして、私と同じように現在はとても元気で、毎朝明るい気持ちで起きていらっしゃることもお話ししてくださった。

こういったご配信は、多くの人に勇気を与えると思う。自分には絶対に希望の朝なんて来ないと思うかもしれない。こんなに辛い今の状況が好転するなんてありえないと思うかもしれない。でも、そう思っていた私でさえ、今は毎日朝が来るのが楽しみだ。

大丈夫、少しずつ朝が怖くなくなるから。それまでは、この作品の私のように、天井をじっと見つめる日があってもいい。この苦しい時期を乗り越えた先には、当たり前のことをありがたいと思えるような、ささやかな日常を幸せと感じることのできる毎日が待っている。

あなたは一人じゃないよ、今は朝が辛くても大丈夫だよ。

あなたにも希望の朝は来る。

天井

 

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