ー24時間、戦えますか?ー
私が子供の頃、TVCMで印象的だったフレーズ。素直な私は、そうか、大人になったら24時間働かないといけないのか。とTVの中にいるスーツの群れを見ていた。
学校を卒業し、社会人になってみたところ、24時間も働くなんて無理だと思った。23歳の私はバリキャリとは程遠かった。働くということになかなかモチベーションが湧かなかった。それは上司や先輩のしている仕事がハイレベルすぎて、自分は何をしていいか分からなかったから。先輩がOJTをしてくれたが、何を言っているのか分からなかった。
働きだして数か月すると、初めての人事評価が出た。S~D判定で、B判定だった。(Sが最高評価、Dが最低評価)今考えると、本当に、本当に、恥ずかしいのだが、私はB判定に納得いかなかった。
評価面談の時に上司は「経験値が低くて、実勢をまだ出せていないからね、今の時点では仕方ない」と言われた。本当に寛大な評価だと思う。それでも私はS判定ではないことに執着し、次回の人事評価では絶対に、絶対にS判定をいただこうと思った。
会社で評価される、これこそ私の生きる道!
まるでゲームを攻略するかのように、私は仕事に邁進し、より良い評価を得るために努力した。社内研修の応募には真っ先に手を上げ、分からないことは質問する。社内イベントは全力で参加。毎日なにかしらに爪痕を残すようにした。
バリキャリという言葉を知った。ああ、私はこれになりたい!バリキャリだと言われたい!と思った。バリキャリと言えば、ハイヒールだ。まずは外見からバリキャリにみえるようにしよう。鼻息を荒くして、靴屋に行った。
ブラックスーツに、ハイヒール。
精一杯の、戦闘服。この2つがあるだけで、強くてクレバーになった気がした。自己肯定感が低くて、誰よりも能力がないと思っていて、人見知りで、要領の悪い私はこんなふうに外見でごまかさないと。本当の私を知られてしまったらガッカリされる気がする。
バリキャリな外見に、会社のS判定が出れば、私は人から認めてもらえる気がするし、何より自分自身に自信を持てる気がする。当時の私は、こんな風に自分で自分を認めることができず、会社の評価で自分の評価を下すようなそんな価値観を形成していった。