わたしの前でだけ 煙草を吸うの
いつも 煙草をくわえてガジっと噛んでから
めんどくさそうに 火をつける
品のない吸い方 でも悪くなかった
そんな夜は いつもの作り笑いも消える
気の抜けた横顔 何を考えていたんだろう
会うのはいつも夕方から 18時になるとスマホを離さない
それは わたしの癖になった
「使われてる」分かってたけど こんな時期があってもよかった
好きとか 嫌いとか これからどうなるのかとか
言葉では縛られないの そんなのもどうでもよくて
ただ 今 ここにあなたがいる それだけでよかった
くゆらす蒼い煙 どこへ行くの
突然 スマホは18時を過ぎても光らなくなった
独りの夜を過ごす 匂いのない暗い部屋
煙草の匂いがたまらなく 懐かしくなって飛び出した
独りでたたずむ 夕暮れの繁華街
すべてがオレンジからグレーに沈んでいく
星空がかすむくらい ネオンが灯っていくのに
そこにもここにも あなたはいない
重くて古いドアを開ければ
いつもの場所に通される
カウンターの浅い椅子に座っても
ハイヒールは床に届かなくて 脱げそうになる
ねぇ あなたの中のわたしって なんだったの?
もう答えは聞けないから
わたしは独り あなたの匂いのする煙草に火をつけ
そっと 蒼い煙をくゆらせてみるね