(当該作品は現在朗読フリー作品ではありません)
ひとつまえの 秋
わたしは ひとりでプラタナスの道を歩いた
それは とても おちついて
しずけさの 中にある秋だった
ひとつまえの 秋
わたしはプラタナスの葉が
落ちる音を聞いた
とても とても たゆたゆと
心の澱(おり)が落ちる音がした
色めく 秋よ
色めく 風よ
肌にさみしさをさそう ただ
そのさみしさは
なにかの終わり そして
なにかの始まりを わたしに告げた
ことしの秋 夕暮れに
わたしはあなたと プラタナスの道を歩く
とても とても とくとくと
ぬくもりあふれる時が流れる
あなたと歩く プラタナスの道には
あたたかい紅(あか)色したふかふかの絨毯がある
わたしとあなた 2人きり
舞踏会は 歩みを進めるたびに
プラタナスの紅色(あかいろ)した葉々(はば)が
さわさわと かさかさと 演奏を始める
ことしの秋 夕暮れに
わたしに聞こえる あなたの声
わたしの下手な ステップを
あなたが笑う その声が
プラタナスの道に 響いている