恋愛の詩(朗読フリー)

関白反対

卵焼きのはしっこ、

焼き魚の焦げたほう、

ステーキは小さいほうをわたしは食べる

黙って食べればいいんだけど

一言多いわたしは言ってしまう

「わたしがこっち 食べるね」

 

わたしは この街の可燃ごみの日を知らない

わたしは この数年洗濯洗剤を買っていない

わたしは たまに…というかしばしば晩ご飯をつくらない

 

だから 関白宣言はされていない

むしろ関白反対だ

毎朝 主より後に ゆっくり起床し

寝床から 主(あるじ)が仕事に行くのを半目で見ている

 

わたしの下着を干す主 それを見ているわたし

わたしが洗濯するとくしゃくしゃに乾くから嫌らしい

だから洗濯はしないことにした

 

しばしば晩ご飯を作るわたしに

「ありがとう」と主は言う

当たり前のことと思ってくれない

そういうところは ありがたく思っています

 

主、どうか長生きしてくれ

それは わたしが幸せであり続けるため

主がいなければ わたしは電球も替えられなくて 部屋は真っ暗だし

ゴミステーションの暗証番号を知らないから 家はゴミ屋敷

 

主、わたしよりは長生きしないでくれ

最後くらいは わたしが主を幸せにするため

「ありがとうね」「また会おうね」

笑顔でお見送りするのは わたしの役目

 

卵焼きはど真ん中を、

焦げてない方の焼き魚を、

大きい方のステーキを

主は黙って それらを

食べ続ける人生を送っていればいいのだ

 

 

 

 

 

 

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ここいま
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