B面(朗読フリー)

ここに太陽だけはいる

聞きたくない言葉を聞いた
なんであんなに怖い顔をして 怖い言葉を吐けるのだろう
そして
なんでわたしはそんな彼女らに言い返さないのだろう
なにもかもがいや 心が重い

まっすぐ前を見ることのできないわたしは
憧れの学校のセーラー服を着たばかりなのに
新品のローファーばかり見つめている

親はそんなわたしの不機嫌な理由を
何とか聞き出そうとしてくる
親には言えないよ、
あれだけこのセーラー服を着ることを喜んでくれたのに

薄暗い、校舎から抜け出した

渡り廊下に降り注ぐ 太陽
まぶしいよ うっとうしいよ
ますます足元しか見ることができない

うっとうしいよ 太陽
いいって言ってるのにどうしてこんなに照らすの?
わたしなんかほっとけよ

しんとした廊下に太陽とわたしだけ
誰もいなくても
誰も味方してくれなくても
太陽だけはみつめてくれるのね

独りじゃないのかもしれないね
うっとうしい太陽がいてくれるなら
逃げないよと決めた
16歳の夏

 

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新しいローファーと
ひるがえした短いプリーツスカートと
「ここに太陽だけはいる」気持ちだけで
立ち向かった

ますます聞きたくない言葉は数を増したが
わたしはまっすぐ前を見た
渡り廊下に呼び出されて
ぐるりと囲まれて 汚い言葉を吐くあの子たちが
騒音に聞こえた

心は相変わらず重かったけれど
渡り廊下から降り注ぐ太陽をまっすぐ見た
ずっとそばにいてくれるなら
わたしは負けない

それでも時々 薄暗い校舎から抜け出す

負けないと決めたのに
なんで涙が出るの
親にはどうしても言えない
悲しい思いさせちゃうから
唇の内側噛んで 涙を止めた

うっとうしいよ 太陽
今は照らさなくていいよ
雲に隠れてろ
なのに空気を読まずに
わたしのセーラー服を照らす

絶対に独りにしてくれないんだね
お節介な太陽だ
わかったよ、わかった
笑顔で生きていくわ、わたしも

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
16歳の夏は暑かった
それはきっと
今まで生きてきた中で一番太陽をみてたから

独りのわたしは 太陽だけを頼りに
必死で生きた
今思えば笑っちゃうような、いさかい

でも
新しいセーラー服とローファーを身に着けたわたしには
サバイバルな夏
忘れない
そしてセーラー服から卒業した今でも
太陽はいる
おせっかいなくらいにずっといる

 

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ここいま
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