エアコンサーキュレーター窓ガスの元栓

そして家の鍵

全てが完璧でないと

家から出られなかった

家を出ては引き返し

まだエアコンの涼しさが残る部屋の窓を

確認した

駅に着いては引き返し

汗だくでガスの元栓を確認した

電車に乗っても あと一駅というところで

エアコンを切ったか気になって

コンセントから火が出ていないか気になって

電車を降りて引き返し

遅刻の言い訳を考えながら

アパートに戻る電車に飛び乗った

玄関の鍵は怖かった

ドアノブを何度も触っていたら

その振動で鍵が開くんじゃないか

隣人の目も怖かった

こんなにドアノブをガチャガチャと動かしていたら

変に思われるのではないか

それでも止まらない

ガスの元栓も怖かった

完全に締めたか

私の力が弱くて却って

中途半端に開いてガスが充満してしまうのでは

ガスが爆発してしまうのではと

何度も何度も元栓を開けては締めた

3分

5分

20分

家を出ようと思ってから
家を出るまでの時間は長くなり
朝9時に家を出るつもりで確認を始めて
11時を過ぎた時
初めて泣いた

性格だと人は言う
丁寧だね
真面目だね

「気にしすぎだよ」

そうやって人は私を褒めては

気にすることをやめるよう諭す

どうして私はこんなに
生きるのが辛くなってしまったの

それならあなた

代わってもらえますか?

私が確認をしている間に
時間は流れていく
ライバルは仕事をして
評価を上げていく

私は汗をかいて確認をしている

これが何になる?

馬鹿馬鹿しいと自分でも思う

でもやめられない

汗と涙と焦りで

余計パニックになる

こんな私は「病気だ」と
気づくのに随分と時間がかかってしまった

あれから何年経つか
私は「病気」と共存している
泣きながら確認することはなくなった
でも 疲れたり 不安な時
「病気」はひょっこり顔を出す
確認しなきゃ 確認しなきゃと
私を焦らせては
緊張させたり
体を震わせたり
汗を出したりしている

性格でも

真面目でも

丁寧でもない

ましてや気にしすぎなんかじゃない
これは「病気の症状がまた出たな」
確認したくて堪らない気持ちを
息にのせて大きく吐き出す
どんなお守りの言葉も効かないけれど
私には「息を吐く」が特効薬だ

そして誰とも競わない

私は過去の私より納得できる生き方をしていくだけ

これからも生きていく
多分「病気」を抱えて生きていく

抱えた荷物は段々と軽くなっていく
そう信じながら

いつの日か

今よりも明日が楽になりますように

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ここいま
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