もうちょっと あとちょっと
そう言って ばあちゃんはトマトをもぐ
もうちょっと あとちょっと
そう言って 父さんは草を刈る
もうちょっと あとちょっとって
色々するのが楽しいんよと2人は笑う
それを聞いて育ったわたし
大人になって 街へ出て
もうちょっと あとちょっと
明日の仕事まで こなしてた
そんなふうにしていたら
ある日 涙が止まらなくなった
もうちょっと あとちょっと なんて
わたしにはできないと思って
大好きな街から逃げ出したんだ
久しぶりに田舎に帰ると
腰の曲がったばあちゃんと
小さくなった父さんが
もうちょっと あとちょっとと
夏の田畑に消えていった
まだまだ若いんよ、新緑の匂いさせながら
2人は笑って麦茶を飲む
あぁ そうか 2人とも
若い時の自分や 昨日の自分や
上手くできた時の自分と競ってるんだ
さて わたしは
一体誰と
もうちょっと あとちょっとと
競っていたんだろう
昨日の自分や 上手くいった時の自分と
競ってみたら 笑いながら頑張れる日が来るんだろうか