太陽が なにもない空を散歩する
アスファルトが 夏の匂いをともなって 乾いていく
ベランダへ続くサッシは まるで画廊の壁にかかる絵画の木枠
刻々と移り変わる模様を わたしは眺めている
わたしが今見ている景色は 宇宙の一部だ
いま見ている宇宙のことを
わたしは たった46文字の組み合わせであらわすことができるのだろうか
それくらい 目に映る太陽は 夏の匂いは
心のあちこちを 刺激しては溶けていく
もしも この宇宙のことを
たった46文字の組み合わせであらわせるのだと わたしが勘違いしたとき
心に稲妻の走る そんな詩は書けなくなるのではないか
自分のこころに忠実に そしてときどき
自分の欲深さや配慮のなさに幻滅しながら
たった46文字を組み合わせて 削って 選んでいく
太陽が なにもない空を散歩する
アスファルトが 夏の匂いをともなって 乾いていく
この部屋にあるサッシから見える宇宙を
わたしは 46文字の組み合わせで 表現しようともがく
おこがましく はかなく 命削れる この瞬間を
ひりひりと抱えている 夏の昼下がり