#30分で書くチャレンジ

20231109/貯金貧乏

10時12分。

平日の空いたATMで通帳記入をし、何も買わずにスーパーを出る。女の休日は、一般的ではない。シフト制で、従業員が交代に休むので、女の休日は毎週木曜が多い。病院に行くには、不便ではあるが、月末近いのにATMが空いていたり、買い物のレジ待ちに並ばなくてよかったりと、わりと平日休みを女は気に入っている。

空いた駐車場に戻り、女は車のドアを開けた。運転席に乗り、エンジンをかける前にいそいそと通帳を開く。さきほど通帳記入を終えた通帳には、給料、ネットショッピングの引き落とし、保険料など数字が入れ替わりたちかわりしている。

今日、女は毎月の貯金金額の変更をした。毎月決まった日に定期預金に積み立てられるので、先取り貯金ができて、使い過ぎを防ぐことができる。女は数年前からこの定期預金を使っており、その数字が積みあがっていくのを楽しみにしていた。

しかし、思ったほど、積立額が増えない。女は思い切って給料のほとんどを定期預金に積み立てる設定をおこなった。

毎月の、自由に使えるお金が2000円になってしまった。女は運転席で頭を抱えた。よく考えもせずに、通帳の金額がどんどん増えたらうれしいと、それだけを考えて積立額の変更をしたものの、毎月2000円では、最初の1週間で使い切ってしまう。その後、例えば病院に行かなくちゃ、とか知人とランチ、とかあったらわたしはどうするんだ?

う~ん。貯金できるお金が欲しい。

子供の頃、大人になったら、お給料が毎月100万円とか、貯金は10億円とか、当たり前だと思っていた。なぜなら、ままごとで使っていた紙のお金は1億円札だったから…。

まぁ、なんとかなるでしょ。

幸い、女には当日ランチに誘ってくるような友人、知人はいない。平日休みの仕事をしていたら、カレンダー通りに休める友人とは疎遠になってしまった。かといって同僚と遊ぶかというと、シフト制で動いているので、自分が休みでも同僚は働いている、逆もまた然り。

悲しいけど…友達いなくて良かった…

女はエンジンをかけた。通帳記入をして、少し余裕があるなら総菜のお寿司を買って帰るつもりだったが、2000円しか余裕がないのでお寿司を買っている場合ではない。家にある野菜を思い浮かべ、サツマイモで何か作ろう!と女はひらめいた。ふかすだけでもいいし、大学芋、スィートポテト…その前にご飯は…昨日の残りを食べよう、煮物はしみてておいしいかも!

女はワクワクしてきた。子供の頃の、駄菓子屋。祖父からもらった100円で、どのお菓子をどれだけ買うか、必死で考えるのを祖父は黙って見ていた。

2000は、100円の20倍!

家にあるもので、何とかしよう。高くて買えないものは、作ったりできるんじゃない?2000円の使い道、逆に何を買うか迷うわ。なんだか、ゲーム感覚で楽しめそう。結構ハードル高いけど、少し頑張ってみよう。こうやって今は貧乏を楽しんで、おばあちゃんになった頃に貯まった貯金でパーッと楽しめたらいいな。女は家にある野菜や、備蓄食材のストック、冷蔵庫や冷凍庫に眠る食材たちを思い出しながら、帰路についた。

(この物語はフィクションです)

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